アフター0
アフター0 岡崎二郎
SFが基本の1話完結もの。
かなり知名度が低いですね。
88点
筆者は短編集が何より好きでして、漫画の才能というものは短編集にて最も発揮されると思っています。
ストーリーの組み立て、それを限られたページ数で破綻なくまとめる、仕掛け、意外性、など漫画に求められるほとんどすべてが短編集には含まれている、と個人的に勝手に考えております。
しかしながら短編集のほとんどは読み切り時代の、投稿集、連載と連載の間の息抜き的なもの、などしかなく、本当に短編集を連載したものは少ないのです。
このアフター0は数少ない連載された短編集です。
作者の岡崎二郎氏はとてつもない知識の持ち主ですので、あらゆるジャンルからSF的な帰結をする手練手管の持ち主です。
表題作のなかでもこれぞSF!というものは少なく日常の延長や、動物ものなどSFだけではない作品が多いのですが、筆者のおすすめは「マイフェアアンドロイド」です。
いわゆるアンドロイド、まあ一般的に言うとロボットものですが、本当に本当に考えさせられるラストです。
アンドロイドのと人間の違い。軽く触りだけ紹介しますと、主人公の日高が友人の経営者大隈に秘書のアンドロイドを紹介されます。そのアンドロイドはアイリスという名で、見た目動作はまるで人間そのもの、そして人間よりも判断力、知識に優れており受け答えも完璧でした。
日高はアイリスにほれ込み、データをコピーさせて所有のアンドロイドの頭に組み込みます。ところが何かの不具合で、態度の粗暴な、アイリスとは似ても似つかないアイリス2となってしまうのです。
日高は手を焼きながらもアイリス2にロボットではなく人間として接していきます。
接していくうちに人間らしく変化するアイリス2。それこそが人間らしさだと、感動する日高ですがそれが大隈の耳にも入り、日高はコピーの罪とアイリス2を引き換えるかどうかの瀬戸際に立たされます。
とまあここからが話の肝なのですが、読むか、調べるかしてもらえれば、続きがわかります。
たまには内容紹介してみましたー。いかがでしたでしょうか?
シグルイ
シグルイ 原作:南條範夫 作画山口貴由
常軌を逸した漫画。ネットでも大人気。
武家社会を極端に描いたギャグと紙一重のインパクト。
89点
作者(作画とあるが、ほとんど彼の創造物といっていいでしょう。原作小説はとても短く原作から発展させた内容になっています)山口貴由は、覚悟のススメなど、右的な三島由紀夫的な、武士の世界に通じる男の美学のような世界観の作品が多く見受けられます。
その中で本作品シグルイは、武士の世界を過剰なまでに凄惨に描いています。あまりの描写に血の匂いがしそうな、リアルな作画も相まって痛みまで感じられそうな本当に物凄い作品です。
根幹のストーリーは伊良子清玄 と 藤木源之助という二人の武芸者の復讐劇をえがいていますが、それを取り巻く周りの武芸者たちの生きざま、死にざま、無茶苦茶な過去、が本当に無茶苦茶笑です。
そして藤木源之助の師匠、岩本虎眼が一番めちゃくちゃです。老齢のために半分ボケているのですが、たまに正気に戻ったときの暴君っぷりたら無いです。
でもね、無茶苦茶な中の彼らの強さにしびれるのです。強さとは剣技、身体能力も当然なのですが、精神性。彼らの精神にしびれるのです。
この作者の作品に出てくるキャラクター達の精神性。これこそが山口貴由の描きたい伝えたいことなのではないだろうかと作者は考えます。
これぞまさに武士道。死ぬことと見つけたり。
言葉通り生きられれば良いのですがね、、、。
パタリロ
パタリロ 魔夜峰央
アニメにした決断がすごい同性愛SF漫画です。
77点
まず、筆者は作者の魔夜峰央氏の大ファンで、作品のほとんどを購入し読ませていただいております。
その上で手厳しいこを書こうということでの前振りです。
結論から先に言うと近年のパタリロはひどい。あまりに歴史が長い(100巻以上でています)漫画ですので、時期により評価が違うのでしょうが、近年の作品は本当にだめです。
まず絵がだめです。バンコランの絵など本当に美しさが罪なの?ってほどへちゃむくれ。
そしてストーリー。コマ割り。
以前からコマ割りをすべて正方形同じサイズにするような回が続出でしたが、そのコマ割りが手抜きなの?と思わされるようなストーリー展開、会話なのです。
魔夜峰央の初期作品の絵は本当に芸術でありますので、今の状況は悲しいとしか言えません。
アスタロトのような美そのものの作品は二度と見れないのでしょうか。
とはいえ歴史の長さが証明するように近年を無視した場合は大傑作、あらゆるジャンルのストーリー、美しい絵、個性の凄すぎるキャラクター。笑えて泣ける、一大エンターテイメントです。
筆者は結局は「FLY ME TO THE MOON」がベストだと思っております。初期傑作です。
泣きます。
アニメでもあります。
是非これだけでも見てください。
作者の魔夜峰央氏は、一時期財政的に苦しくなり、コレクションしていた宝石を売り払い、困窮していたそうですが、飛んで埼玉という作品がネット派生のムーブメントで映画にまでなり、財政が落ち着いたそうです。
これほどの大作品であっても困窮するとは漫画という世界、商売はとてつもなく厳しいのですね。
恐ろしい世界です。
ザ・ファブル
ザ・ファブル 南勝久
2020年6月現在、なかなかの人気を得ています。ちょうど完結のコミックスが今月発売になりました。暗殺者の漫画です。
78点
岡田准一主演の映画にもなりました。殺し屋漫画!組織内での内紛がメインストーリーですかね。
筆者はこの作者の漫画は初めてきちんと通して読みましたが、雰囲気が独特ですね。会話や人物描写、表情など、あまり他にはないかと思われます。この作者の雰囲気をパクった作品はよく見受けられますが。
おそらく関西出身の作者であろうと思いますので作中の関西弁はほぼ完ぺきですかね。
この作品はほとんどが標準語ですが。
関西出身の筆者にとって漫画、アニメ、ドラマ、映画などでたまにでるエセ関西弁は辟易するほど違和感があるのです。とくにVシネのやくざ映画などはひどいもので、”このキャラは田舎から大阪に出てきたから変な関西弁なんや”と自らの中で設定を練るほどです。
人気のわりに採点は低いのですが、最終巻がひどいのです。中身はネタバレになるので詳しくは書きませんが、敵キャラの動機、主人公の組織の最終的な落としどころ、などいわゆるご都合主義にあふれております。最後のエンディングも含めた流れに説得力がありません。
最終巻がなければものすごく良い漫画なのですがね、絶妙なところにあったバランスが最後の最後に崩れました。リアルさと漫画的展開の妙。
これが大事ですよね。
最後にこれが崩れる漫画は正直多数あります。
皆を納得させるクライマックスは難しいと考えさせられる漫画です。
夏子の酒
夏子の酒 尾瀬あきら
一大地酒ブームを作った。業界の救世主
85点
ドラマにもなりました夏子の酒。
筆者は酒を飲みませんので、上に書いたブームを云々というのは想像笑です。
ただ作品中の状況と筆者の知っている酒を取り巻く状況が変わっておりますので、おそらくはブームになったと思われます。
たまに触れる酒業界の話でも夏子が出てきますからね。
この作品は女性の自立も裏テーマにあるのでしょうね。2020年の現代とはこの80年代90年代の作品中の状況はあまりにもちがいますが、当時の封建的な中で夏子は自立した女性像を体現しているのでしょうかね。
かつ、この作品のほとんどの舞台は田舎ですので、田舎の村社会の悲哀も同時に描かれており、モーニングらしい社会を学べる漫画になっております。
筆者のモーニング誌へのイメージはうんちく漫画が多い、勉強になる漫画が多いというものです。この漫画もその系譜にあたるかと思いますが、よりドラマが重視されていますので、普通に、普通におもしろいです。
筆者も何度も泣きました。
実話を元にされているとのことなので、リアリティも抜群です。
おすすめです。
山賊ダイアリー
山賊ダイアリー 岡本健太郎
これまた少し流行りのサバイバル系、狩りに特化した漫画。
80点
筆者は夜な夜な、アマゾンのコミックを検索徘徊するのですが、なかなかこのサバイバル系は一大勢力を誇っております。
古くはさいとうたかお氏のサバイバル(そのものズバリのタイトル)に始まり、こういった山、海でのウンチクも兼ねた漫画が大挙しています。
この山賊ダイアリーはムーブメント初期にでたはずであるとの記憶ですが、絵のシンプルさとドライ感がなかなか味わい深いです。
作者は原作者としてソウナンですか!というアニメ化までした作品に携わっていますが、個人的には山賊ダイアリーのドライ感のなかにある狩人コミュニティ独特の雰囲気が好きです。
80点はまあ、おもしろさときれいなまとまり方でそつがないというか安定した漫画だなーという基準であります。
続きを読みたい気持ちがありますがね。山賊ダイアリーSSという海に特化した続編はありますがそちらでもいいので続きを期待です。
普通に面白いですよ。これは。
ポーの一族
ポーの一族 萩尾望都
少女漫画です!歴史的な作品といっても過言ではないでしょう。
93点!
筆者は少女漫画も少しだけ読みます。
この作品はとてつもなく有名ですが、いわゆるエポックメイキングでしょうか。
ヴァンパイアのバディもの?と言っていいのか、不老不死の悲哀を描く数少ない漫画の一つです。
主人公エドガーと彼にヴァンパイアにされたアランが永遠の少年として生き続けるストーリー、同性愛のような少年同士の愛憎劇といったところでしょうか。今ではとりとめもないお話ですが、当時では衝撃的だったのでしょうね。
萩尾望都氏はポーの前にも同性愛をテーマにした漫画をいくつも発表しておられましたが、その完成形ともいえる作品がポーの一族でしょう。
ちなみに筆者は不老不死ものが好きです。
でもあまりないんですよねー。今思いつくものとしたら人魚の森、火の鳥、くらいでしょうか。
点数が93点なのは実は数年前にポーの一族の新作が出ていたのです。数十年もの時を経ての新作ですので、作品の雰囲気、キャラクター造形、世界観が微妙に違うのですよ。
そこが93点の要因です。ヴァンパイア仲間もかなり新たに出てきていましたが、正直馴染めなかったです。
とはいえ漫画誌には必ず残る作品になるでしょう。映画のインタビューウィズヴァンパイアは影響を受けていると筆者は思うのですがね、、、。